信じられないかも知れないが、
こんな僕にも彼女がいる。
もう何ヶ月もまともに会えていないけれど。
僕がこうして寝込んでしまってからというもの、
彼女は我が家の玄関に
そっとお見舞いを置いて行ってくれる。
そしてあとからLINEが来るんだ。
「置いてったよ😊」って。
それが彼女の気遣いなのだ。
弱った姿など見せたくないという
ちっぽけなプライドを、
彼女は見抜いているんだ。
でも何度かそんなことが続くと
流石に悪い気がする。
せっかく来てくれたのに。
…いや、違う
僕が彼女の顔を見たいんだ。
そんなこともあって、
僕は外の世界へ耳をそば立てる。
そして、
また数日後
……自転車の音に僕は飛び出した。
久しぶりに見る、いつもの彼女。
驚き、嬉しそうな顔。
でもそれもほんの数分のこと。
慌てて彼女は帰って行った。
今の僕にとって……
彼女がここに来るまでに
付着してしまう化学物質でさえ
体調悪化のリスクになってしまうから。
体調は回復することもなく、
悪化しながら時間だけが過ぎて行く。
寂しいとさえ思えない日々が
僕から現実感を奪って行く。
そんな呟きも虚しく空を舞うだけだ。
…………。
…………。
不意に、あの音がする。
彼女の自転車の音……!
僕は咄嗟に玄関へ駆け出していた。
寝室、
リビング、
…そして……
重たい体では
動作のひとつひとつが
もどかしくて仕方がない。
最後のドアを開けたとき
もう、陽射しは春になっていて…
そして、
目の前には彼女が立ちすくんでいた。
「……あ…あの……、久しぶり……」
なんて、
気の利かない言葉だろう。
彼女はまるい大きな目を
もっと大きく見開いて、
「……うん…」
って、
どっちもどっちじゃないか(笑)
彼女の表情は目まぐるしく変わる。
笑顔……
驚き……
悲しみ……?
彼女の手のひらが僕の頭へ伸び、
ふたつ ポン ポン、と跳ねる。
そして慌てて距離を取り
涙の溜まった瞳で
笑顔を見せて手を振った。
一瞬、
僕は何が起きたのか理解できなかったのだが…
前に会ったときより僕はさらに痩せていて
今まで決して
見せることなどなかった
パジャマ姿のままなことに気づいた。、
やっちまったなぁ……。
僕は、
手渡された小さな包みに呟くしかなかった。
※ 現実の出来事を下敷きにした創作です ※
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